2006年04月20日

情報伝達速度を「英語力」の指標にしよう

発音を練習しようとすると「ネイティブ並の発音は土台無理」「発音よりも話す内容が大事」と言われる。文法を学ぼうと思うと「文法を考えながら話す人はいない」と言われる。単語を覚えようとすると「闇雲に暗記しても意味が無い」と言われてしまう。とかく英語力の向上は難しい。しかし「英語力」って何だろう。

よく言われる話だが、英語を道具として使う必要がある人にとって、英語がネイティブ並である必要はない。文法が完璧である必要も無い。つまり、伝わればいいのである。「私は英語が下手でして」と言いつつたどたどしく話すAさんも、端から見るとペラペラのBさんも、意思は一応伝えているとする。発音や文法が完璧でなくて良いならば、Aさんはもうそれ以上上達しなくて良いのだろうか。Bさんはさらに「ペラペラに見える」ので、上達する必要はないのか。上達する必要があるとすれば、何を目標にすれば良いのか。

結局最後には意思が伝わる場合でも、英語が下手な人の何がイライラさせるかというと、言いたいこと(情報)が伝わるまでに異常に時間がかかることである。そこで、「言いたいことは伝えられないことはないけど、どうも苦手で…」という人たちの「英語力」を表すものとして、情報伝達速度が出てくる。

結構早口なネイティブスピーカーが話す時の平均情報伝達速度を1ユニットとする(曖昧な定義だ)。自分が話す・聞くときの伝達速度が何ユニットぐらいかを考えてみれば、自分があとどれぐらい上達したいか(または上達する必要があるか)を決める指標となる。もちろん数字は大きいに越したことは無い。

例えば、仕事で困らない実用英語を身につけるべく努力している人の目標は入力(聞き取り)で1ユニット以上。つまり、結構早口な人の英語を理解できるレベルだ。異常に早く話す人の英語は聞き取れないかもしれない。でもそれは「あいつの喋りは速くて分からないよー」と文句を言っても許される範囲だ。

出力(発話)の目標は、0.5ユニット以上。ネイティブスピーカーでゆっくり目に話す人と同じぐらいの速度である。つまり、こちらが外国人であることで気を遣ったりしてくれない、普通のネイティブスピーカーと話す場合でも「こいつ英語が下手だな」とイライラさせない程度のスピードである。これより低い数値だと、一度話した相手が次からは話しかけて来なくなるかもしれない。

そこでまずは、時間あたりの単語量が必要になる。アーウー言うだけで単語が出てこないと、相手は確実にイライラする。黙っていれば情報は伝達されない。何をおいても、必要な時には少なくとも単語をどんどん並べなくてはならない。

では出来る限り速く話せばそれでいいのかというと、そういうわけでもない。あまりに日本語訛りが強すぎる発音だと、言っていることが通じない。全く通じなかったら情報伝達速度はゼロである。何度も聞き返されながら、何度も同じ言葉を言い直していると、これまたひどく速度が落ちてしまう。そして相手のイライラに繋がり、自己嫌悪にも繋がってしまうかもしれない。相手がスラスラと聞き取れるぐらいの発音は必要である。

また、あまりに単語を知らなさ過ぎると、これまたスピードが下がってしまう。一単語言えば済むものを「ほら、あの、これがこうでああでああなもの。何て言うんだっけ?」と聞いていてはまた相手がイライラする。仕事でよく使う範囲の単語や言い回しは身につけておく必要がある。

そして、文法を知らなさ過ぎると、複雑なことを伝える時にはスピードが下がってしまう。相手がよほど賢い人ならば「自分の言った単語を一度バラして、文脈に沿った内容に合わせて単語を並べ替える」という作業を頭の中でやってくれて理解してくれるかもしれないが、自分で話すときに並べ替えて渡した方がずっと誤解が少ない。

以上、入力出力それぞれの目標値は当然人によって異なる。周りが皆ネイティブスピーカーではないならば入力目標が下がっても良いし、第2言語で話すことが如何に大変かを理解できる人たちとのコミュニケーションが目標ならば出力も下がって良い。これらの数値はあくまで、話の内容を限定した上での話である。仕事の話で入力1ユニットの実力がついたとしても、戦場で兵士が叫び続ける戦争映画を見るときには0.1ユニットかもしれない。

結局は、自分の英語のスピードがネイティブスピーカーに比べてどれぐらいになりたいかを考えて努力しましょうという話である。なかなかうまく行かない場合は、何が邪魔をしているのかを認識して、そこを努力してみましょうという話である。漠然とした「ネイティブ並にペラペラになりたいなー」というようなたどり着けないゴールよりは
「仕事の議論をする時に言いたいことをあいつらの2倍以内の時間で言えるようになる。全員に通じるぐらいの発音で」
の方が勉強のやりがいが出るのではないか、という話である。初めの方で「1ユニット」と定義した割にはあまり数値が出てこなかったなあと反省しながら、1.8リンガルの僕はまた英語学習に励むのである。

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» もう一度、情報伝達速度を「英語力」の指標にしよう

  • 2006年04月26日 23:03
  • from 諸悪の根源は物理的

MASAさんより、前々回のエントリー「情報伝達速度を「英語力」の指標にしよう」へのコメントを頂いた。 実は、スピードに関してはあまり重要視をしていません。という... [続きを読む]

Comment on "情報伝達速度を「英語力」の指標にしよう"

なるほど。
とりあえず、集中なくて、(何かし)ながらでも、英語が理解できるレベルをと思っていましたが、ダイソレタ目標だということがよく判りました。

個人的には、英語力は値として考えてはおらず総合力だと思っています。発音・文法・単語・文化、どれも理解する必要があり、どれが欠けてもいけないものだと思っています。

実は、スピードに関してはあまり重要視をしていません。というのも、日本語の場合で考えても人によってはゆっくり話しても、相手にストレスを与えることはないからです。よほどせっかちな人の場合はあるかもしれませんが…。

今は語学力を判定する方法はないんですよね。TOEICは読解力・聴解力などのインプット能力しか判定することができず、アウトプットの能力は判定できません。

難しい所ですね。ただ、英語力の定義、とても興味深く読ませていただきました。

  •   MASA
  • 2006年04月26日 06:30

MASAさん、
コメントありがとうございます。
追加エントリーを書きましたのでそちらを参照ください。
http://www.cotton-tree.com/garyu/archives/2006/04/post_200.html

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