2006年02月26日

なぞなぞを出されて論理的思考能力を見せる

前回のエントリー「入社面接でなぞなぞを出す」を書いてからつらつらと考えてみた。論理的思考能力、しかも「何処かで学んだ問題の解き方を再現する能力」ではなく「初めて遭遇した問題(状況)に適切に対処する能力」というものは測るのは難しいものである。知識を問うわけではなくナマのスマートさ(頭の良さ)を測る方法として考え出されたのが「なぞなぞ」なのだろう。

ただ、なぞなぞが実際に役に立つにはいくつかの条件が満たされる必要がある。それら条件を満たすのが難しいと思う人たちが「面接試験でなぞなぞを出しても意味が無い」という意見に振れるのだろう。思いつくままに条件を挙げてみる。

  • 受験者が答を知らない(有名な問題は出せない)
  • 用意された答に穴が無く、誰もが納得できる
  • 問題の条件設定が必要十分(「ずるい」要素が入ってない)
  • 論理的に考えれば(「ひらめき」無しで)答が出る
  • 答に至る思考の途中経過が不可欠であるぐらい複雑
  • 時間内に(少なくとも部分的に)答が出るぐらい簡単
  • 答が出なくてもいい線行ってたかどうかが伝わる
  • 論理的に解くのが妥当だと受験者が納得できる
  • 想定外の答(思考過程)を適切に評価できる能力を面接官が持っている

例えば、前エントリーであげた問題

部屋の中に電球が3つある。部屋の外にスイッチが3つあり、それぞれのスイッチは電球どれか1つに繋がっている。あなたはスイッチのある場所に居て、電球を見ることは出来ない。スイッチを好きなだけ操作してよいが、部屋に一度入ったら出ることは出来ない。どのスイッチがどの電球に繋がっているか、どうすれば分かるか?

が機能した場合、例えば受験者が以下のようなことを言えば正解、ということになるのだろう。
「通常電球は2つの状態を取ることが知られている。「点いている」と「消えている」。この2つを使えばもちろん2つの電球については区別がつくが、3つを区別するには情報不足であり、何か別の情報を引き出すために、別の状態に持っていく必要がある。「割れている・壊れている」…スイッチだけで壊すのは不可能。却下。「切れている」…無限の時間が許されているならば、1つのスイッチをつけて数万時間(確実にフィラメントが切れるまでの時間)待ち、もう1つのスイッチを入れて、部屋に入り、「点いてる」「切れてない」「切れてる」で解決…いや、透明な電球ならOKだが不透明ならダメだ。他には…「熱い」…1つのスイッチをつけて電球が温まるまで待ってから切り、もう1つのスイッチを入れて、部屋に入り、「点いてる」「冷たい」「熱い」で解決…いや、自分で触れるようなところに電球があるならOKだが、部屋の天井が高いなどで届かないところに電球があるなら無理だ…」

僕が初めてこの問題を聞いたときの答は「『点いてる』『冷たい』『熱い』で判断する」だったのだが、これでは問題に不備がある。受験者が「温度を確認できるか?」という質問をするか、そういう緻密さも含めて試験しているのだという言い訳も出来るが、そうすると「部屋の壁に穴を開ける道具を使ってもいいのか?」「電球は見えなくても部屋の窓から光が漏れるのではないか?」「実は仲間を1人部屋の中に入れても良いのではないか?」などなども聞いてみないと分からない状態になり、論理的思考からとんち問答の領域に入ってしまう。「常識の範囲で考えろ」と言いたくなるが、それもまたいい加減な条件であり、常識で考えれば「部屋に一度入ったら出られない」などという問題の条件自体がおかしい。

そういうことを踏まえて、「受験者が答を知っているかもしれない」「答の妥当性に不安がある」という潜在的欠点を克服しようとすると、「なぞなぞ」が「不可能問題」に発展する。不可能問題になると「自分の頭で考えるのに妥当な問題か」あたりが問題を考える時のポイントかもしれない。

それら条件を考えた上で、条件設定にパンクが無い問題を考えてみたら暗算を思いついた。これならばアメリカの大学で深く考えられることの無いものだし(逆にもし考えたことがあるなら自分で考える習慣があると言える)、答に行き着くまでの問題の簡略化はそれほど難しいものではなく、かつ論理的である。しかし、論理と言うよりはテクニックの面が目に付くものであり、受験者が日本などのアジアの国で初等教育を受けた場合には
[晴]晴れの日もある:論理的思考力

しかし、計算ができたからといってエンジニアとしての論理的思考力とは無縁だよね……。

という指摘は全く妥当である。受験者のレジュメを見ると、いかにもインド系っぽい名前もあるのを見て、やはり暗算問題は止めることを決意。

そしてウェブ上で色々見てみて、行き当たったのが
Life is beautiful:ビル・ゲイツの面接試験-私の場合

二次元座標上に、それぞれの辺がX軸・Y軸と平行に置かれた長方形Aと長方形Bがあるとする。その時、長方形Aと長方形Bが一部でも重なるかどうかを判断する条件式を書け。フォーマットは、CやJavaなどのコンピューター言語でも良し、単なる数式でも良い。制限時間は30分。ただし、考えていることを声に出し、ホワイト・ボードを使って自分の考えのプロセスを説明しながら解くこと。

「答を知っていれば一発」ではあるが、それさえクリアすれば僕の考えた条件は全て満たしている。いい問題だなあ。

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Comment on "なぞなぞを出されて論理的思考能力を見せる"

初めて出された問題を解くプロセス重視というのは「論理的能力」じゃなくて単純に「応用力」か、もしくは「アドリブ力」という、
基本という基礎があって初めてできる能力が前提にあるんじゃなかろうか。
例えばビル・ゲイツの問題に関して言えばまず、「X軸とY軸に並行な長方形の概念、さらにそれが2つあって重なってるかどうかの
判定の概念を『プログラムとしてみて』解き、そのプロセスを表示しろ」と言ってます。
ここでは基本の数学的素養として長方形の概念、二次元座標の概念、重なりの概念は知ってて当然という前提のもと、更にこれを
プログラミングして貰うというプログラムの基礎までも求められています。
論理的思考はその上にある能力であって、ホワイトボード上にプロセスを展開する際にそれを見極めるという形のようですね。
でまぁ、その上で「しかし、計算ができたからといってエンジニアとしての論理的思考力とは無縁だよね……。」
というのは確かに真理かもしれませんが、ホワイトボード上にそういう計算力を表示できた場合、かなり有効でもあると思います。
そうなると、一番いいのは計算テクニックも利用可能な論理問題を出し、「解答手順も書く」ことによって、解答者の基礎と応用力も
見極めることが可能なのではないでしょうか?

  •   kaiou
  • 2006年03月03日 01:10

ちなみに前エントリーであげた問題は量子物理学で言うところの「シュレーディンガーの猫」でおなじみではありますな。
逆に言えば、それ(猫)を知ってる解答者はそういう類の答だすので注意です(笑
尚、論理問題に確率を使うとこういうこともあると言う例として
ttp://d.hatena.ne.jp/okgwa/20060218/p1
を参考にするのも面白いです。

  •   kaiou
  • 2006年03月03日 01:13

kaiouさん、
興味深いコメントをありがとうございます。
スイッチと電球の対応は確率で表現できるということでしょうか?スイッチを操作する前ならそういう表現になるでしょうね。
リンク先の議論、面白いですね。アメリカではまさにそんなゲームショーをテレビでやっています。
http://www.nbc.com/Deal_or_No_Deal/

いえ、仮に電球問題で答えに確率を出したらおそらく不合格でしょう。猫を知ってる博識さには敬意を払うとしても、
問題が問うてるのはあくまで「いくつかの操作を行い、部屋に入った後に『どのスイッチが電球と繋がってたか』を求める」
の部分なので、猫は無関係でしょう。
ただし、猫を知ってる人はうっかり量子論を展開してしまうという意味で危険な問題ともいえるってだけです(苦笑
結論として、読解力を求められる問題はむしろ、出すほう、作るほうが難しいですなと言いたかった訳です。

  •   kaiou
  • 2006年03月04日 06:39

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