2005年10月05日
自分らしく何もしない
- 固定リンク
- コメント (4)
- トラックバック (11)
- カテゴリー:ネット上の記事
「下流社会 新たな階層集団の出現」という本が話題になっている。「好むと好まざるとにかかわらず」で目次が紹介されている。かなり面白いらしい。
次の帰国の際に買う本のリストに入れておいて、他のブログも漁ってみた。そこでちょっと引っかかる記述に遭遇。
本書は、こうした「自分らしさ」や「自己実現」を求める者は、仕事においても自分らしく働こうとしすぎる結果(好きなことだけしたい、嫌いなことはしたくない)、高収入を得ることが出来ず、結果的に生活水準の低下を余儀なくされていると推測している。
そして続けて、
はじめにに書いてあるのだが、 「下流とは、単に所得が低いということではない。コミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲、つまり総じて人生への意欲が低いのである。その結果として所得が上がらず、未婚のままである確率も高い。そして彼らの中には、だらだら歩き、だらだら生きているものも少なくない。その方が楽だからだ」 とある。
この2つのブロック、何か矛盾していないだろうか。「自分らしさ」や「自己実現」を求める者が、結果的に様々な能力や人生への意欲が低い状態になると言う。「自己実現」という言葉から連想されるものは勤勉、それによる高い能力、高い意欲ではないだろうか。この因果関係は何処かで激しく破綻している。
むしろ、因果は逆なのではないだろうか。人生への意欲が低いことが原因で「自分らしさ」を重視するようになる。
つまりこうだ。意欲が低く、何を成すわけでもなく、地道に努力を積むわけでもなく時間が過ぎていく。周りの人々は自分より「上流」に上がっていき、自分はだんだん軽蔑の目で見られるようになる。そういう目から自分を守り、自己嫌悪に陥るのを防ぐためのロジックが「自分らしく生きたい」「自己実現を目指している」ではないのだろうか。俺はその内凄いことやるんだ。そんな単純な物差しで俺を計らないでくれ。
「自分らしく」というのは便利な言葉である。どれが良くてどれが悪いかを他人にジャッジされることが無い。自分自身でさえもジャッジできない。この言葉を使えば「駄目な奴」にならずに済むのである。実際に、大学にも行かず、会社にも入らず、世間一般で言われる立派な道を歩むことなく下積みを続け、後に大成功した人も僅かながらいる。その人たちと自分をとりあえず重ねて置く事が出来るのだ。
90年代の不況の途中から流行り始めた「自分らしく生きる」「本当に大切なもの」「スローライフ」「ナンバーワンよりオンリーワン」というフレーズ群にも似たような危険性がある。これらの言葉が悪いとか嫌いだとか言いたいわけではない。だが、他人に対して使うのならまだ良いが、自分に対して使う時には気をつけなければならない。自分を甘やかすキーワードになってしまうからだ。ものすごく簡単に濫用できて、かつ濫用したときの手のつけられなさ加減に非常に危険な匂いがする、という話なのだ。特に、人と異なることをやっている、やろうとしている人は要注意だ。「人と違う」というだけで満足しないためにも。
とここまで書いて、ひょっとしたらこの文章は以下の引用への答えになりえるかもしれない、と思った。どうだろう。
「自分らしさ」というキーワードは実は私自身気になっていたのである。というのは、実績もなくさしたる突出したところの見あたらない若者に限り、自分らしさに対するこだわりが強いと言うことに驚きに近い感覚を覚えていたからである。その根拠のない自信はどこから来ているのだろうか、というのは私にとっては非常になぞだったのである。
光文社 (2005/09/20)
売り上げランキング: 362
- 固定リンク
- コメント (4)
- トラックバック (11)
- カテゴリー:ネット上の記事

Trackback on "自分らしく何もしない"
以下11件のトラックバックはこのページのエントリー"自分らしく何もしない"を参照しています。
このエントリーのトラックバックURL:
» 自分らしさの自分知らず
- 2005年10月06日 01:38
- from 404 Blog Not Found
もしかして彼らのいう「自分」と「我々」が思う「自分」というのはかなり異なるのではないか? RHEOS REPORT:下流社会 - livedoor Blog(... [続きを読む]
» なぜ自分を探すのか
- 2005年10月06日 01:44
- from 猫と考えよう
「自分探し」という言葉はいつごろからあるのでしょうか? かなり昔の漫画,『カムイ外伝』にもこの言葉が出てくることから,昨日今日に使われ始めた言葉ではないよ... [続きを読む]
» 三浦展『下流社会』
- 2005年10月20日 22:46
- from タカマサのきまぐれ時評
■三浦展『下流社会』(光文社新書)は、いまから ひとつきぐらいまえに 「「ジャスコ化」社会」で とりあげた、『ファスト風土化する日本―郊外化とその病理』の著者の... [続きを読む]
» 「下流社会 新たな階層集団の出現」
- 2005年10月22日 05:22
- from 三文文士の空回り
以前「希望格差社会」 の書評でも書いたが、僕は大学卒業後27歳までフリーターだった。 フリーターの頃は、時給1,000〓1,... [続きを読む]
» 「だらだら」してたら下流になる?!
- 2005年10月30日 05:35
- from ビジネス良書選
下流社会 三浦 展 (著) 価格: ¥819 (税込) 日本で階層社会が広がり、 親の所得や学歴によって、階級格差が固定化している というこ... [続きを読む]
» ★痩せないと、下流社会へ?・・・(><)
- 2005年11月02日 03:47
- from 持続可能なブログダイエット☆痩せて福ぞう!
いつも日記をご覧くださって、有難うございます!ブログダイエット、7ヶ月間の成果がこれです。☆2005年4月1日→11月1日体 重 109.4kg →92.2kg... [続きを読む]
» ロハスに近い脱力系
- 2005年12月07日 23:56
- from 非日乗的日乗inowe社長blog
まとまりがなくなってしまいました。言い残したことがようさんあります。 取り敢えず。 [続きを読む]
» 「下流社会」の若者たち
- 2005年12月19日 05:39
- from Make Your Peace
三浦展著「下流社会」(光文社新書)が売れているらしい。「下流」という言葉は、今や流行語になっています。この本自体はまぁ、軽〜い内容。タイトルのインパクトが全てと... [続きを読む]
» そんな私はLOHAS系〜下流社会・三浦展著
- 2006年01月09日 04:06
- from 地方都市日記 〜Resort Town Ver.〜
遅ればせながら「下流社会」(三浦展著、光文社新書)を読了。著者自身が認める通り、調査のサンプル数が少なく、統計学的に有意かどうか疑問のあるところではありますが... [続きを読む]
» 下流社会 新たな階層集団の出現/三浦 展
- 2006年02月07日 15:46
- from がんばれ30代 〜書評・雑感〜
下流社会 新たな階層集団の出現三浦 展 光文社 (2005/09/20)売り上げランキング: 362Amazon.co.jp で詳細を見る ドキっとします。 「... [続きを読む]
» 下流社会 新たな階層集団の出現/三浦 展
- 2006年02月07日 15:50
- from がんばれ30代 〜書評・雑感〜
下流社会 新たな階層集団の出現三浦 展 光文社 (2005/09/20)売り上げランキング: 362Amazon.co.jp で詳細を見る ドキっとします。 「... [続きを読む]



トラックバックありがとうございます。
みんなが努力すればある程度人生の目標が立った時代とちがい、不透明な現在では、生きてゆく意欲においても個々人の能力格差(あるいはそもそもの家庭環境や住環境などの差)が増幅されてしまう傾向が強いんだと思います。というか、こういう傾向が強まったのはご指摘の通りバブル崩壊後の不況の中で、かつては世の中の経済余力が今で言う「負け組」程度の能力の者でも相当数養えたのが、養えなくなった、ボーダーラインが高くなってしまったわけです。その結果(潜在的かもしれませんが)負け組意識を持った者の割合が増加したのですが、彼らの不満を吸収する役割を果たしたのが「自分らしさ」とか「オンリーワン」とか「清貧の思想」とかでしょうね。同時に今はうだつが上がらないがいつかは俺だって・・・という矛盾した意識もあり、自分はといえば実質負け組なのにホリエモンを応援することで現実の鬱憤を晴らすような現象が起こっているのが今の日本ではないでしょうか。
すなふきんさん、
コメントありがとうございます。ひょっとすると、不満を吸収すると言った方が実情に近いのかもしれませんね。
はじめまして。ハラナ・タカマサさんのブログから来ました。
>因果は逆なのではないだろうか。人生への意欲が>低いことが原因で「自分らしさ」を重視するようにな>る。
賛成します。多分そうなんじゃないでしょうか。
ただ、三浦さんのおっしゃる「人生」は、東京志向や出世志向が強くておかしい、という指摘が後藤さんというブロガーによってなされています。
実際、自分も含めて、いまどきの20代30代は、生活が大変で、大きな夢など持ちたくてももてない、あるいは持つだけムダ、という気分があると思います。
たった数歳でも年下になればなるほど、階層逆転などありえない、生活程度は悪化するばかりというイメージを抱いて、無力感におしつぶされそうになっているみたいです。
ワタリさん、
確かに出世志向が強い人と弱い人は、どこか根本が違っているような気がしますね。お互いに理解し合えることは無いのかもしれません。以前から両方の人が存在したとは思うのですが、最近の世代には出世志向を持てない環境で育った人が多いということかもしれません。