2005年09月04日
「梅田望夫と語る会」
9月2日、「梅田望夫と語る会」に参加してきた。僕が梅田さんを初めて知ったのは「フォーサイト」の連載の「シリコンバレーからの手紙」である。CNET Japan の「英語で読むITトレンド」も毎回読んでいたので、案内のメールを見つけて直ぐに申し込みをした。
一般公募の参加者が4人、JTPA関係者が梅田さんを含めて4人。一般の参加者が「お題」を提示して、それについて梅田さんが思うところを語るのを軸にフリーディスカッション。主な内容はすでに梅田さん御本人のブログやJTPAからの参加者である四元輝博さん、kuboyumiさんのブログで紹介されている。
予想通り、梅田さんは話が非常に上手な人だった。人当たり良く、落着いた語り口で分かりやすく纏まった話をしてくれる。色々な質問や意見が出たが、全てについて既に思索を巡らせていたような雰囲気で、沢山の引き出しから次々に物を引っ張り出して見せてくれたような印象である。ついでによく通るダークボイス。きっと、今までも沢山の若い人たちにこんな風に話をしており、これからも続けていくのだろう。
印象に残った話。殆どは梅田さんの口から出たものだが、他の参加者の意見も含まれている。
- 世の中は、何かを生産すると直ぐに共有されて無価値になってしまう方向に進んでいる。この流れが進むと、いずれはカネを稼ぐ手段は人に対するサービスを提供する手段に集約されていく。
- アメリカには、ホットな分野に資源を大量に投入して一気に発展させる力がある。しかし、「終わった」と見なされた分野ではピタッと進歩が止まる。自動車産業しかり、家電分野しかり。日本ではどの分野もこつこつと進歩させていくので、それが日常生活の利便性の向上に繋がっている。
- 自分の得意なものをいくつか組み合わせてみると、誰もいないユニークなマーケットに行き着くことが出来る。そこに行けば競争が殆ど存在しないので非常に楽になる。ただ、多くのものを組み合わせた方がユニークなマーケットになりやすいが、それだけサイズが小さくなりがちなのでバランスを考える必要がある。
- Google Adsense は先進国の人々にとってはそれほど大きなインパクトは無いかも知れない。しかし第三世界の人々にとっては、先進国と同じ水準でドルベースの収入を得られるという物凄いシステムであり、世界の生活レベルの平準化を進める要素になる。
- インターネットは「マトリックス」の世界に進んでいる。あの映画では人間はエネルギーをマザーコンピュータに供給する「電池」になっていたが、この世界では人間は知的資源をインターネットに供給する「知の電池」になっている。その量があまりに膨大で、限られた時間内で個人が全てを消費するのは無理なので、重要なのが「検索」である。
- Entrepreneurshipの正しい訳は「起業家精神」ではない。起業という意味は含まれていない。より良い訳語は考慮中。(僕がとりあえず考えてみたのは「ビジネス推進要素」)
- 今も昔も未来も変わらない「対人能力」とは、共通の知識背景を持つ人とのコミュニケーションだけではなく、どんなにバックグラウンドが違う人ともコミュニケーション出来、ビジネスを進められる能力である。
僕は個人的には、インターネットの登場による先進国と第三世界の生活水準の平準化はそんなにすぐには起こらないんじゃないかと思っている。中国のように教育とインフラ両方にどんどん投資されている国はともかく、未だにインターネットアクセスのインフラが整ってない国は沢山ある。たとえそのインフラが整っても、文章その他を作って「情報発信」して読者を惹きつけるようになれるような教育が整うまでには「次の10年」では達しないのではないだろうか。
また、色々と質問を重ねたが、「対人能力」の話は個人的に消化不良だった。話のレベルが食い違っていたのか、より根本にある「金を稼ぐとはどういうことか」という部分の考え方を共有できていなかったのではなかったのか、もうしばらく自分の中で考えてみようと思っている。
中でも、特に自分の中で響いた話(痛かったともいうかもしれない)。
- (特にエンジニアには)「日本と関係ない仕事内容」で勝負したがる人が居るが、自分が日本で培ったものを捨て去って勝負するより自分の能力を総動員して勝負した方が良い結果になる。
- 会社の中でも、自分の得意なことを組み合わせて新しい仕事を作るべきである。そうすれば自分が一番だが、既存のポジションに自分を当てはめるだけではずっとハンデ戦を戦っていることになる。
- 「アメリカに絶対残る」と思っている人はアメリカに残るが、「アメリカでも日本でもどちらでもいい。場所には拘らない」と言っている人は必ずいずれは日本に帰る。
今回のメンバーを見ていても感じたが、今まで会った在米邦人の中でアメリカに永住する決断をした人たちからは特有のパワーを感じる。自分が日本に居る時に作っていた「自分の能力で出来る範囲を規定する壁」の存在が伝わってこないのだ。日本人と話すとよく出てくる「まあ、~が出来ればいいんだろうけど、それは無理だし」というやつである。
自分の場合、新入社員になった時にはかなり多岐に亘った強固な壁が出来ていた。アメリカ駐在することによってその壁は崩すことが出来たが、その先には「まあなんだかんだ言っても自分の生まれた所から自由になることは出来ないんだろう」を土台とする壁が待ち構えていた。アメリカ本社への移籍でその壁も半分ぐらいは崩れたが、その先にはまた「大きな会社以外で働いたことがない」という壁が立っている。それにしても、僕はまだアメリカに永住するか日本に帰るか決めかねている。うーん、このままだといずれ帰るのか?
もっと早いうちにこの記事をアップするつもりだったが、書こうとするたびに色々なことを再び考えさせられ、なかなか進まなかった。この週末の間にあの「お題」を何度も思い返すことがあり、あの金曜日の夜は非常に有意義な時間だったと再認識した次第だ。今まではっきり考えてなかった思想もぽこぽこ出てきて、しばらくは退屈しなさそうである。しばらく頭の中で転がしてみて、どういう行動に結びつけるかが次の課題だが、まだその段階には達していない。とりあえずはこのブログにかける時間を増やして、頭で考えていることをもっと色々書いてみようかなあ。
今回のように「各人が話題を提供し、それについて語る」という形式も面白いが、それぞれの話題についてもっと深いところまで話が発展すればそれもまた違った興味深いものになったかもしれない。1回の会でテーマを1つだけ決めて、それについてとことん話し合う、という形式のものにも参加出来ると面白そうな気がする。
さいごに、kuboさん、おにぎり大変おいしゅうございました。お土産のおにぎりを見つけた妻は床にひっくり返って喜んでおりました。
新潮社 (2001/08)
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