2005年03月14日
Born Into Brothels
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"Born Into Brothels" を観た。邦題は「売春窟に生まれついて」。カルカッタの売春宿で生まれ育つ子供たちと、そこに断続的に住み、彼らに写真を教えて、さらに教育を受けさせる方法を模索するザナ・ブリスキというイギリス人の話。今年のアカデミードキュメンタリー部門賞を受賞した。でもドキュメンタリーなので、このあたりではマイナーな映画館1館でしか観られない。
R指定(17歳未満禁止) だったので売春シーンも出てきたりするのかと思ったが全然そんなことは無く、周りの大人たち(親を含む)が子供に投げつける言葉の汚さが原因だった。大人に怒鳴られる場面が時々出てくるのだが、これがまた暗澹たる気持ちにさせるのだ。
既に母親を亡くした子供もいるが、子供たちの母親はみんな売春婦だ。女の子は大きくなると必ず売春婦になる。子供たちは母親の仕事を知っているし、将来自分も同じことをすることを受け入れているように見える。将来に希望が無いことを知りながら、毎日食事を作ったり水汲みをしたり、客に酒を出したりしている。父親はいないか、大抵役立たずだ。
ザナ・ブリスキは過去の経験から、こういう環境に自分がカメラを持って入ると、多くの人から拒絶を受けることを知っていた。それもあって子供たちにカメラを渡し、操作方法を教え、好き好きに写真を撮ってきてもらう。取ってきた写真をみんなで見て、講評を聞かせ、いい写真はなぜいいかを教え、写真の取り方の授業をする。
さらに、子供たちを動物園に連れて行く。しかし子供たちは、檻に入れられている動物を見てもそれほど喜ばない。自分たちを見ているようだ、と言う。海に連れて行くと、子供たちはおおはしゃぎ。海の写真をたくさん撮り、水をかけあい、とても楽しそうだ。今までこんな遊び方をしたことは無かったんじゃないだろうか。しかし、楽しく遊んだ後に子供たちが家に戻ると、そこでは母親たちが外に出て客を待っている。
子供から「勉強したい」という訴えを聞き、教師でもない自分に何ができるかザナは悩む。フィルムメーカーでしかない自分に出来ることはなんだろうか。「ここから出たい」と子供たちから聞いて、ザナは子供たちを学校にやる方法を考える。寮がある学校で教育を受けさせれば、しばらくは赤線地帯に帰らなくて済む。出来れば永遠に。
そのための資金調達方法として、ザナは子供たちの写真を使うことにした。ニューヨークで写真の展覧会をする。ユネスコのカレンダーの写真に彼らの写真を使う。展覧会は評判になり、資金も出来る。この過程で、自分の写真を見に来た人達が大勢写っているビデオを見て、子供たちはとても嬉しそうだ。彼らにとって、自分のやったことが認められる経験は非常に貴重なものなのではないだろうか。
子供たちの中に、アジットという男の子がいる。小さい頃から絵が得意で、ほとんどの子供が周りの人間だけを撮っているような段階から、才能を感じさせる写真を撮っている。細かいものを被写体にしたり、さまざまなアングルを試したり。カルカッタでの展覧会で、テレビのレポーターに何になりたいか聞かれ、彼は答える。「最初は医者になりたかった。その後は画家だった。今は写真家になりたい」…僕は、この答えに衝撃を受けた。ひょっとして、彼の今までの生活では、売春宿で働くこと以外で考えられる職業は非常に限られていたのではないか。それぞれの段階で、それが唯一彼に考えられた選択肢だったのでは。
その後、ザナはアジットをアムステルダムの展覧会に連れて行くためのパスポート取得に奔走し、子供たちを学校に行かせる手続きを進め、親たちを説得する。そして子供たちは赤線地帯を離れるが…。
ザナは何度か「結局はあなたの決めることよ」と子供たちに言うが、果たしてこれまでに決断が出来るほどの教育を受けていたのだろうか。親たちにとっては、確実に稼いでくれると思っていた娘が「教育」を受けに行くのは大きな恐怖だろう。また、あの環境で10年以上育てられた子供にとって、全て新しい環境に移って、今までと全く違う価値観の元に行動するのは大きなストレスではないのか。実際、出発の日、とても嬉しそうにしていた子もいれば、離れるのが辛くてたまらない子もいる。
最後に、それぞれの子供が現在どうしているかの説明が一人一人出てくるのだが、これがとても泣ける。元々人生の選択肢を与えられずに生まれた8人の子供が、偶然ザナに会ったという大きな偶然によって、選択肢を得た。しかしそれは一部の子供にとってのみ幸運と呼べるものだ。子供は親にとって大事な収入源であり、既得権なのだ。親の許しが出ないために家を出られない子供もいれば、学校に通い始めてから連れ戻されたり、自分の意思で家に帰った子供もいる。彼らにとっては環境によって、または自分の人間形成によって既に変化の可能性は閉ざされていたのかもしれない。ザナの登場程度の出来事は、彼らにとって大して意味の無いことなのかもしれない。
こういう活動が続けば、いずれは多くの子供がこの地帯を離れ、高い教育の成果を以って、この地帯を消滅させることになるかもしれない。しかし、その可能性を前向きに想像すると、同時に起こるであろう、現役の売春婦の世代の抵抗や犠牲に思い当たってまた気持ちが暗くなる。ポジティブな将来像とネガティブな将来像が乱暴にかき混ぜられた状態で終わる。どちら向きにもカタルシスが得られない、ひたすら重たく胃に残る映画だった。
この活動のウェブページはここ。
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» アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門:Born Into Brothelsが受賞
- 2005年03月22日 03:07
- from 911 - 488
今年の第77回アカデミー賞で、個人的に注目していた長編ドキュメンタリー賞で [続きを読む]
» Born Into Brothels (2004)
- 2005年10月31日 21:00
- from azcar
【邦題】売春窟に生まれついて 【Cast】Avigit , Gour, Puja, Kochi, Manik 【Director】Ross Kauff... [続きを読む]
» Born Into Brothels
- 2006年01月05日 02:22
- from カステーラの夜
映画自体観ていないのですが、この「Born Into Brothels」。邦題は「売春宿に生まれて」です。なかなかとっつきづらいタイトルですが(^−^; ... [続きを読む]

TBありがとうございました。
Webサイトで内容を見ただけでも、かなりの衝撃を受けました。
たしかに、第三者が出てきて手を差し伸べ、
子供たちの世界をひろげてあげるということが
ほんとうにいいことなのかは・・・?ですね。
でも、そんな社会の存在を知ることができたのは
個人的にはすごく良かったと思っています。
日本で公開するかなぁ?
初めまして。
活動を紹介するサイトを見てきました。
誰もが自由に未来を選べる社会が来て欲しいと思います。
現実には、とても難しいとは思うのですが・・・
(ぴ)さん、
あの子供たちのうち何人かは、それまでの人生や現在の環境のために、既に変化の可能性が無くなってしまっているのかもしれません。そのままでいることが本人にとって一番心地よいのかもしれませんが、だからいいのだとも言い切れないのがなんとも…。
黒猫のみわさん、
全世界の子供が充分な衣食住を得て教育を受けるためには、先進国の人々の生活水準を下げる必要があるのだと思います。確かに非常に難しいでしょうね。
私はまだ映画を見たことがないのですが、是非見たいと思っています。ここで質問ですが、英語が分からないと理解は厳しいでしょうか?映像の持つパワーを信じているので多少英語が出来なくても大丈夫かなとも思うのですが・・・
ココナッツさん、
どれぐらい英語が分からないのかにもよりますが、見ることをお勧めします。もし全然分からないならば、途中退屈してしまうかもしれませんが。