1999年12月13日
お金はかかっているんだぞ
時々会社内で講師を招いての技術セミナーに出席することがある。内容は純粋に技術的なことばかりなので、アメリカだからといって日本に比べてスタイルが違う部分は多くない。あるとすれば、テキストに日本の教科書風の本を使うことはほとんど無く、講義で使うOHPをそのままプリントアウトしたものをバインダーに綴じただけになっていること。そして、生徒の質問がものすごく多いこと。
先週のセミナーに集まったのは18人だった。最初に自己紹介。名前だけではなく、自分の経験と知識とセミナーに期待していることを話す。2、3人を除いて全ての人は「今日習うもの自体は良く知らないが、それに関連するバックグラウンドは非常に良く知っている」「非常に長い経験がある」と口々に言う。つまり、講師は全く気を抜けないということだ。
授業が始まる。まずはバックグラウンドについて。ほとんどの人が知っている内容なのでいきなり雰囲気がだれる。それを察した講師はスピードを上げる。基本を説明しているスライドはちらっと見せるだけで、すぐに引っ込めてしまう。経験の浅い参加者は大変だろうなあ。簡単な質問で説明を止めるのも気が引けるだろうし。
そして内容が本題に入ってくると質問の嵐。中には講師を馬鹿にした態度を取りながらやたらと批判的な質問をする人もいる。込み入った質問をされて講師が口篭もると、他の参加者が答え、講師を置き去りにしたディスカッションが始まる。たびたびに「それは違うんじゃないか」「その図はおかしい」と言われ、すぐに説明が悪かった、図が悪かったと認めてしまう講師。失笑が漏れる。
僕はすっかりがっかりしてしまった。ビデオでも本でも勉強は出来るが、一番効果的なのは直接誰かに教わることだと僕は思っている。誰かに教わることの一番のアドバンテージは「質問」だろう。おかしいんじゃないかと質問して、これはおかしくないんだと更なる説明を受けることにより、理解が深まる。そんなに簡単に講師が悪い、スライドが悪いと言って終わらせてしまっては、言われたことを記憶する以上には何も学べないじゃないか。
セミナーは4日間だったが、最終日の午前中は他の仕事があって欠席してしまった。午後から出ようと昼休みが終わる直前に行ってみると部屋には講師しかいない。
午前中は急の仕事で出られなかったけど、どれぐらい進んだ?
「残ったセクション2つと他の話を少し。午前中は受講者の半分も出席しなかったんだ。君も出なかったんだろ?午後からは練習問題をやる予定だけど、任意参加だから出なくてもかまわないよ。ひょっとしたら午後は誰も戻ってこないかもしれないな。君も多分、自分の仕事をする方が大事だろ?」
その話を聞いてやる気が消し飛んだ僕は「仕事の状況を見て、緊急じゃなさそうなら戻ってくる」と見え透いた嘘をついて、午前中に配ったという授業の評価アンケートとセミナー終了証をもらって帰ってきた。同僚の分も。
Trackback on "お金はかかっているんだぞ"
このエントリーのトラックバックURL:
"お金はかかっているんだぞ"へのトラックバックはまだありません。


"お金はかかっているんだぞ"へのコメントはまだありません。