1999年06月06日

なに言ってるんだお前

アメリカに住みはじめて1年と少し経ったが、相手に馬鹿にされているのかな?と思うことはたまにあった。日本では起こらないような、小さな不愉快だ。そうなってしまった理由は、大抵の人は2つ思いつくだろう。1つはいわゆる人種差別、もう1つは単に言葉が通じにくいから。

よほどのケースでない限り、完全に人種差別だと断ずることは難しいと僕は思う。社会の建て前としてそういうことは純粋に悪だということになっているので、あからさまな差別用語をあからさまに投げかけるような分かりやすい人などなかなかいない。カリフォルニアというアジア人があまり珍しくない地域に住んでいるせいかも知れないけれど。

少なくとも、僕は今まで「完全な人種差別」を経験したことは無い。差別が含まれていたという解釈もしようと思えば出来るかも知れないけど、単に言葉が通じなくてイライラしただけだろうな、というケースばかりだ(と言ってもそんなに多くもない)。例えば自分の発音が通じなかった時、相手が早口で良く分からなかった時。相手はニヤニヤとして少し見下した態度になることもあるし、少し苛ついた顔をして早く会話を終らせようとすることもある。主に、店で店員と話をする時に多かったと思う。それから、会社で周りの人たちに認知されるまでの間はそういうことは時々あった。

そういう時にどうするか。僕は取るのは「相手に我慢させる」「自分で何とかする」「関わらない」のどれか。そのままの状況で別に得も損もしないのならば、何もしない。店で既に用事が済んだ時なんかがそうだ。相手の態度に少ししか現れず、自分のやりたいことがきちんと出来るならば、人種のせいで相手がどんな感情を持っていても気にならない。ただし、自分が損しそうだったら、いくらでも抵抗する。会社内でのケースはほとんどがそうだった。言葉にアクセントがあることで相手の態度が悪い場合、自分でも意味不明だと思うことが混ざったりしても、相手に自分の意思が伝わり、OKだと言わせるまで話し続ける。発音が悪くて相手が聞きとれないのが問題だったら、何度でも言い直して、聞かせる。さすがに紙に書いたことはないけれど、5、6回繰り返したことは何度かあったと思う。そして、その後1人で練習したりする。

来たばかりのころは、ファーストフードを買う時が大変だった。店員にはメキシコ人が多くて、強いスパニッシュアクセント。向うもこちらのアクセントに慣れていなくてお互いになかなか分からなかった。そこで、ケンタッキーを標的にして練習した(チキン好きだったから)。名付けてドライブスルーチャレンジ。初日は普通のセットメニューのみ、次の日はもう少し複雑に、次の日は更に... と繰り返して、「2ピースセットメニューにもう1ピース追加、うち2ピースをクリスピーチキンにして1ピースだけオリジナル、サイドディッシュは普通のマッシュポテト/コールスローじゃなくてコールスロー/マカロニ&チーズ、ビスケットはコーンブレッドに変更して、ドリンクはダイエットコーク。それから単品でチキンポットパイ」が成功したところで終了。このコンビネーションが成功したのは3回目だったかな。

もちろん、言葉が通じにくいということで逆に優しくなる、いい人もたくさんいる。Santa Rosa は白人の比較がかなり高い町だから、周りに白人しかおらず、マイノリティーをどう扱えばいいのか良く分かってないような人も良くいる。僕が話しはじめるとちょっと驚いた顔から困惑した顔に一瞬変わり、目を大きく見開いて小さい子どもの話を聞くように、話す時は子どもに話し掛けるように... ということもたまにあった。いや、そんなにジェスチャーを大きくしなくても言ってることは分かるんですけど、と言いたくなった。大抵おばさんだった。

住んでしばらく経つと、ふとトラブルの頻度が激減していることに気がつく。言葉の上達につれて減っていったということはやはり人種の差別は体験していなかったのかな、と思ったりしていると、観光地での対応に驚くことがある。自分が外国から来た外国人だと一番強く感じる場所は、観光地だったりする。話し始めてアクセントきつい言葉を聞かれてからではなく、外見が日本人だからと言うことで既に態度が変わっている。

酷い方では、レストランで注文しようとしているものより高いものを次々勧められたり、請求書に2倍近くの値段が書いてあったり、チップが少ないと文句言われたり。これは大抵自分が損をするケースになるから、戦いが始まる。親切な方では、値段をいちいち紙に書いてくれたり、値段だけをとてもクリアな発音で言って、あとはニコニコしてたり。ハイウェイに乗る道を聞いたら驚かれたり。これについては、同行していた人に「なんとなく馬鹿にされた気がする」と言ったら、「親切でやってくれているのだから文句を言うのはおかしい」と諭された。確かにそうか。

考えてみると、日本人だと言うことで今まで一番失礼な扱いを受けたのは、ロサンゼルス空港で、日本語の出来る日系の職員からだったように思う。後ろからいきなり日本語で話し掛けられて、なんと言ったか聞き返したら、「僕は日本語で喋ってるんだから、ちゃんと反応してよね」とか言われた。何百人もの日本人の相手をして嫌気がさしてますという雰囲気がとても良く伝わってきた。「日本人だから」ということで差別があるのは、日本人が完全にいないところか、日本人が山のようにいるところなのかなあ、と思ったりもする。

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